暑い夏、熱き心

 この夏は全国的に例年より梅雨明けが早かった。ところがとたんに猛暑の連続。節電と相俟って暑さ対策に辟易している。こんな暑い夏に、爽やかに熱き心意気を感じさせてくれるニュースもある。
 その一つ。女子サッカーワールドカップ(W杯)ドイツ大会準決勝で、日本代表「なでしこジャパン」が強豪スウェーデンを3−1で破り決勝へ進んだ。世界のメディアは「なでしこジャパン」を称賛しきった。敗れたウェーデンは「日本は決勝に出る資格は完全にある」と、完敗したことを認め、勝者を称えた。フランスは「米国は決勝で日本の戦いぶりに驚くだろう」と続き、「ダークホースの勝利」(ブラジル)「アジア国家として1999年に準決勝進出の中国に次いで2回目」(韓国)と各国は高く評している。
 確かに、「なでしこジャパン」は動きが速く、短いパスワークを利して、また、倒されてもすぐ起きてプレーに加わり、相手を攻める。決勝トーナメントへ進出し、劣勢と言われたドイツに延長戦の末1−0で勝ち、世界中から一層注目され始めた。
 選手たちはふだん生活のために仕事をしながら練習している。皆、薄給だという。いわば、ハングリー精神で心を鍛え、技術とその心が一体となり、いいプレーを生み、熱き心を出現している。アメリカとの決勝は18日、今度は我々が「なでしこジャパン」へ熱き心を送って世界の頂点に立ってもらいたいものである。
 もう一つ、熱き心を痛く感じたことがある。それは、日本とスウェーデン戦に4万人もの人が観戦したことである。その大部分はドイツ人であろうと思う。ドイツは日本に敗れたばかりであったのに。しかし、ドイツ人は更に質の高いサッカーを楽しみたいという文化を持ち合わせている。どのチームの戦いでも構わないのだ。文化は心を高く、広くしてくれるようだ。
 次に・・・。夏の全国高校野球が始まった。大震災があったばかりなのでいつもの大会とは趣が異なるようだ。地震津波放射能の被災地福島で、生徒が避難のため転校して部員が少なくなり、チームを組めない3つの高校が連合チームで出場した。8−1でコールド負けであったが、亡くなった肉親のために、転校した仲間のために必死に戦う姿に心を打たれた。あまりにも違う境遇にありながら、ある選手は「野球ができる喜びを感じた」と笑顔で語った。これぞ熱き心だ。
 もう一つ。大相撲名古屋場所5日目(14日)、大関魁皇が通算1046勝、歴代1位になった。1988年(昭和63年)5月9日の初勝利から8467日目に達成した。しかし、今の魁皇関の体は満身創痍。千秋楽の翌朝には病院へ駆け込む場所が続いている。いつ引退してもおかしくない情況にあるが、ファンはやめさせてくれないという。「大関を陥落するまで土俵に立つ」と心に決めているようだ。38歳にして今だにファンに愛される魁皇関の人柄がすばらしい。
 結局、話題はスポーツが3題独占したことになるが、仮に、今の政治や経済ではこのテーマの話題を見つけるのがたいへんだ。いつの日か、テーマに相応しい話題を書けるような政治・経済になってほしい。