甲子園の校歌に異変?

 今夏も、甲子園では高校野球の熱戦が展開されている。きょう、ベスト8が出揃った。高校の実力は紙一重、その上、甲子園には魔物が棲んでいると言われるように、何が起こるかわからないのでどの高校にも優勝の可能性がある。ここまでは例年通りであるが、今年は、甲子園の校歌に異変が生じている。
 きょう、ベスト8に勝ち進んだ如水館高校(広島)の校歌。 

水。てのひらに抄えば、てのひらになる  見つめよう、この心、しなやかに、きょうを生きてゆく  きらめいて、きらめいて、いまここに、水のように  (以下、3番まである)

 曲は穏やかなポップス調。女性シンガーにも似合う曲。教育理念は創設者による「水の如くなくてはならない人になれ」。如水館という校名の由来である。1940年創設。1993年、校名を如水館高校に改称。
 残念ながら1回戦で敗れた至学館高校(愛知)の校歌「夢追い人」。 

一番高い所に登って一番光る星を掴んだ  一番辛い道を選んで一番強い心をまとった 海を渡る風が吹いたカシオペアが近くに見えた  夢を追い続けた そしてここまで来たでもどうしてかな熱い涙が止まらない うつむきかけた時 君の顔が見えた  差し出された白い腕が翼に見えた 

 曲はやはりポップス調。SMAPに歌わせてもよさそう。校訓は、自立 友愛 共創。1905年創設。2005年、校名を至学館高校に改称。
 2回戦で1点差で惜敗の高崎健康福祉大学高崎高校(群馬)の校歌。

Be together! Be together! Let's be together  茜色の雲に向かって空をゆく白い鳥の群れ あの一羽つぎの一羽も 翼に風をまとって羽ばたく  Be together 鳥を彼方へ連れて行ってよ Wow Wow あの風のように 君のココロに寄りそって飛べたら ああ われらの健大高崎高崎高校

 曲はアニメ調、ポップス調という評判。歌詞に、カーペンターズがよく歌っていた wow wow ・・・がユニークだ。1936年創設。女子短大から大学になり共学高校併設。
 一般に、校歌というとその学校の教育理念やめざす人間像、歴史、地域の特性(地理,自然、気候、人々)、校名などが謳われてきた。しかし、生徒にはあまり人気がない。それでも校歌としてのセオリーを保守してきた。
 今回、甲子園に出場したのは49の高校。全国の高校の1%にも満たない。その中で、少なくとも3校の校歌は趣が違う。多分、もっと調べたら、全国にはこのような感じの校歌はたくさんあるということになる。
 上記3校の校歌には、教育理念や目指す人間像、若者への願望、未来感が含まれている。それらが、やさしく、おだやかに、願望をこめた詩になっていて、さらに詩にあった曲想で仕上げている。それが私学高校に多いことは特質をだそうとしていることの一つの表れであろう。経営者の勇気ある発想の転換が素晴らしい。
 時間をかけて、校歌に込められた意味が生徒たちにしっかりと理解されて、その理念に近づく教育に期待したい。校歌が独り歩きしないように。