「時代おくれ」じゃないよ英五さん!

 今は亡き河島英五の代表曲の一つ「時代おくれ」」(1986年リリース)は曲と詞と歌手がマッチしていて、男の心意気・ロマンを歌った天下一品の名曲だ。先ずは、歌詞をおさらいしてみよう。
 一日二杯の酒を飲み 肴は特にこだわらず マイクが来たなら 微笑んで 十八番を一つ 歌うだけ
 妻には涙を見せないで 子供に愚痴をきかせずに 男の嘆きはほろ酔いで 酒場の隅に置いていく
 目立たぬように はしゃがぬように 似合わぬことは無理をせず 人の心を見つめつづける 時代おくれの男になりたい
 不器用だけれど しらけずに 純粋だけど 野暮じゃなく 上手なお酒を飲みながら 一年一度 酔っぱらう
 昔の友には やさしくて 変わらぬ友と信じこみ あれこれ仕事もあるくせに 自分のことは後にする
 ねたまぬように あせらぬように 飾った世界に流されず 好きな誰かを思いつづける 時代おくれの男になりたい  
 目立たぬように はしゃがぬように 似合わぬことは無理をせず 人の心を見つめつづける 時代おくれの男になりたい
 
 酒場を舞台に、人との付き合い方や酒のたしなみ方、不器用な自分を叱咤し、さらには妻子への気配り、そして旧友への思いやりなど時代おくれどころか、今もこの先もそうあってほしいことばかりである。
 特に「あれこれ仕事があるくせに 自分のことは後にする」の歌詞がいい。残念ながら今は、その反対の世の中ではないかと思う。自分のことを後回しにして、他人のことを優先する考えはさほど評価されず、むしろ自己主張を真っ先にやる方が受けがいい、という風潮だ。
 しかし、私は自分のことを後回しにする謙虚さや寛容性は、今の時代にこそ貴重だ。そこには、他人への思いやりがあり、優しさがあり、リーダー性が秘められており、もしも、そういう人の部下だったら人一倍仕事をするだろうと思う。
 河島英五はまさに「時代おくれ}の人生を歩んでいたのであるが、2001年4月16日、48歳の若さで肝臓疾患により急逝した。3人の子どもたちは父親の無念を晴らすべく全員歌手になっている。ちなみに、作詞は阿久悠、作曲は森田公一であるが、歌手・河島英五の人柄や人生の最先端を行く名曲であると思う。