北朝鮮、大丈夫かな

 19日朝鮮中央テレビは特別放送で、北朝鮮金正日総書記が12月17日8時30分急死したことを伝えた。現地指導に向かう列車の中で、急性心筋梗塞により死亡。69歳だった。後継者は三男の正恩党副委員長であることを宣言。北朝鮮メディアは、各地に集まり泣き叫ぶ市民の姿を伝えた。
 20日付け朝日の社説は「混乱回避へ各国は強調を」と論じた。中国の外相も同じように考え、日本、韓国、米国の各外相と電話で協議し、朝鮮半島の平和と安定への連携を確認した。北朝鮮が独裁者を喪失して不安定になる場合に備えてのこと。ここでは、中国がイニシアティヴを取った。
 総書記の死を悼み泣き叫ぶ北朝鮮国民性を、「すごいな〜」と素朴に受け止めていたが、読売の編集手帳を読んで唖然とした。「泣くふりをしないと連行されるから、皆、泣いている」「国営テレビで悲しむ住民の大半は演技だ。自分と家族の人生をめちゃくちゃにした張本人の死に、拉致被害者も嘘泣きを強要されているのか。むごい国である」。産経も同じように報じている。
 17日に死亡し、19日までの2日の間に、泣き叫ぶ演技の情景を録画しておいて、公表と同時にライブとして流した、ということかな。そういえば、何十人もの女性が体をゆすり、泣き叫ぶという所作は皆同じだった。また、人前では泣きながら、一人になると平然としている姿を目撃した、という報道もある。
 さらに、総書記の死亡日時や場所についても疑義が生じている。乗車していたという列車はその当時、全く違う場所にあり、また、夜型の総書記が寒冷の早朝に列車に乗るようなことはあり得ないとも。何故このような疑いを持たれるのか。現実をそのまま発表すると、国民はじめ世界各国に信頼のない総書記にとって不利な何かがあってのことかな。早朝から国民のために死を賭してまで働く総書記を英雄化し、信頼回復を狙ったという説。だとすると、かえって何と愚かなことかと思わざるをえない。
 こうした中で、米国で上位発行部数を誇る THE WALL STREET JOURNAL 紙による今後の北朝鮮情勢の分析は客観性があり、参考になると思う。
 (1)後継者の正恩氏は、疲弊した経済と人民を救うような政策転換より権力の掌握に専念するだろう。(2)北朝鮮の経済指標はおよそ400億ドル。韓国の経済規模の5%に過ぎず、体制が崩壊したら経時的、軍事的コストは莫大で、国際社会で誰が、何を負担すのかを決めるのが難しい。(3)選択肢の1つとして、南北再統一がある。しかし、北朝鮮経済の大きな負の遺産を韓国が負う潜在的費用は余りにも膨大で、その可能性は極めて薄い。(4)結局、1,2年は権力継承をめぐり不安定な国情のまま推移するものとし、世界各国が注意深く見守る必要がある。
 北朝鮮は日本にとって直近の隣国なのに、拉致問題や核開発計画など で相互の信頼感はないに等しい。「軍の反乱の可能性は低い」(ロイター)というものの、北朝鮮が全てにおいて追い込まれて「狂気の沙汰」に陥らないよう祈るのみである。