映画 RAILWAYS

 きょう、4月2日、市内の映画館で妻と観てきた。 電車の運転手一筋に42年、あと一ヶ月で定年退職を迎える滝島徹(三浦友和)、そんなある日妻の佐和子(余貴美子)は結婚を機に辞めた看護師の仕事を再開すると言い出した。徹は「どうして今さら!」と強く反対した。ふたりは口論となり、佐和子は家を飛び出してしまうーーー。そして、ついに佐和子は結婚指輪と一緒に離婚届を夫に差し出した。
 きょうは全国的に入社式、辞令交付式が行われ、新採用者が新しい人生のスタートを切った。楽しいことも辛いことも待ち受けている未来であろうと思うけど、夢や希望の門出であったはずである。残念ながら採用の夢を叶えられなかった若者もたくさんいるとのこと、次の機会を待って挑戦して欲しい。
 折しも、一昨日の3月31日にはやはり全国的に60歳の定年あるいは57,58歳で勧奨によりたくさんの人が退職した。私の知り合いも何人か退職した。今頃はホッとしている人、再雇用の人、運悪く体調を崩し静養の人など多様な時を迎えていると思う。そして、歳月を重ねてこそ感じる迷いや焦り、あるいは紆余曲折の自分の人生を見つめ直す分岐点に立っているとも言える。
 退職後のいわゆる第二の人生は仕事から解放され楽しいことも多く一年一年が貴重である反面、心身の健康維持、家族や夫婦のありかたをめぐって腐心することも多い。しかし、長年にわたり培ってきた豊かな人生経験によって問題点を克服していくしなやかさを持ち合わせているので頼もしい。何より、心身ともに健康であることが第二の人生を大きく左右することは確かである。
 徹は一人で退職3日前に離婚届を市役所へ出した。そして、思い出の公園でふたりの結婚指輪を藪の中に投げ捨てた。徹は電話で佐和子にこのことを伝えると、彼女は驚愕して声が出なかった。佐和子は自分自身の第二の人生設計を夫に分かってもらいたくて離婚覚悟で訴えていただけなので徹の決断に戸惑いを感じたのであった。長年寄り添ってきた夫婦ゆえに本当の愛や真意が伝えにくくなっていたのである。
 徹は退職当日を迎えた。指導してきた新人の運転手からハンドルを引き継ぎ、いよいよラストランに・・・。同僚の運転手や線路工事の人たちが手を振ってくれる。娘夫婦が踏切に車を止めて両手を振って見送った。運転席から見える富山の風景も最後だ。無事、終着駅に到着して42年の勤務を終えた。
 運転席から客席を振り返ると妻の佐和子が乗っている。佐和子は「長い間ご苦労さまでした」とねぎらった。徹は「乗ってくれてありがとう」と言って頭を下げた。そして、徹は佐和子の手に新しい結婚指輪の入った小箱を渡して「結婚してください」と言った。佐和子は一瞬戸惑いながらもすぐに徹の愛を感じ取り、うなづいた。
 映画ゆえの結末と言うなかれ・・・。これも人生経験が成せる技、しなやかな心がそうさせたのである。若者ならさっさと離婚するであろう。
 年度末と新年度に定年退職者と新採用者が織りなす人間模様。私もそのどちらもくぐり抜けてきた一人でなんとも感慨深い。