昨今の「お墓」事情

 先般、義兄が急逝した。死因は心不全、享年83歳だった。早速、喪主を務める長男と一緒に菩提寺の住職を訪ね、打ち合わせをした。住職はすでに葬儀社との間で決めてある葬儀日程を確認した後に、戒名について説明をされた。本寺ではほとんどの故人の戒名は、◯◯院〇〇〇〇信士であること、戒名料はお布施を含めて〇〇円、お車代〇〇円でお願いしたい、とのことであった。
 実は、本寺はすでに故人となった義兄の叔父・叔母の菩提寺でもあり、叔父・叔母の葬儀もここで執り行われている。もう10年ほど前になるが、戒名料等はその頃と全く同じである。他のお寺と比べてみても思っていたより高額ではないようだ。また、住職の説明や応対も適切で、心が込められていた。喪主の長男夫婦は少し間をおいて「その通りお願いします」と伝えた。
 戒名料については、寺側から提示しないのが原則的であったが、近年は、はっきりと提示する傾向にあるようだ。確かに、その方が何かと詮索する必要がないのでいいという考えもある。また、どうしても「高額すぎる」と困惑する人もいるはずである。
 つい最近、NHK総合TVは「最近のお墓事情」について取り上げた。ある大墓地では管理料を何年も払わない人が年々増えて、墓地は雑草に覆われていた。持ち主に連絡がつかない、連絡がついても墓参に来ない人がいるという。かといって、簡単に墓地を撤去することもできない事情があるようだ。
 また、墓地を持たないで、自宅に仏壇をつくり遺骨を置いて弔っている例もたくさんあるという。さらには、墓参する代わりにお寺とインターネットで結び、クリックすると故人の写真が出てきて、その画面にお参りする例も紹介された。その他、寺とのトラブルや死生観の変容なども。
 こうした「お墓」事情の背景には、少子化によりお墓の代々の後継者がいなくなっているという重大な問題がある。後継者がいても墓地と遠隔地に住んでいて墓参が叶わない人もいる。また、世代交代による墓や寺や死生観に対する大きな変化も見逃せないと思う。こうした世相をもとにお寺や墓地管理者側は戒名料や管理費等についても検討を加えていかなばならないと思う。
 義兄の場合、早くに墓地を購入してあり、後継者もいるので代々この菩提寺のお墓に眠ることができるので安心だ。戒名料も何とか用意できたようなのでよかったが、その他の葬儀にかかる費用は戒名料をはるかに越えており、今後はこちらもよく検討しておかねばならない。