アポリアaporia

 ギリシア語で「解決できない難問」という意味である。そう云えば、世にアポリアがたくさんある。例えば・・・。
 今、エジプトではムルシ大統領の辞任を求めて全土でデモが起きている。その数6月30日だけでも100万人に及び、4人が死亡し、約400人がけがをしたという。デモが起きた原因は、ムルシ大統領のイスラム色の強い政権維持に、反政権派が反発したことに端を発しているようだ。あるジャーナリストは、それ以前に、経済と治安不安が根底にあると指摘している。いずれにしても、エジプトにとっては頭の痛いアポリアであろうと思う。
 ブラジルで開催されているサッカーコンフェデレーションカップは、開催国ブラジルが圧倒的な強さでスペインを降し優勝。選手と熱狂的なファンが一体になり喜びを爆発させた。ところが、ブラジルではこの大会開催中に地下鉄や物価の値上げに反対するデモが続いていた。やはり、根底には「経済」問題がある。富裕層と貧困層の格差が拡大するばかりで深刻だ。ブラジルのアポリアも根が深い。
 ところで我が国では・・・・。尖閣諸島をめぐる領海権問題で中国との国交が頓挫している。きょうは、尖閣沖で日本の議員が乗った船団と中国の監視船が交錯する問題が生じている。日本は「我が国の領海を侵犯した」と抗議。中国は「日本は挑発的行動を即刻やめるべきだ」と応酬。全く接点が見えて来ない。
 また、韓国とは竹島の領有権や慰安婦問題等の「歴史認識」をめぐり不仲が続いている。きょう、日韓外相会議が昨秋来開催され、韓国は「仲良くしたい」と言いながら、我が国の閣僚の靖国神社参拝を問題視し「歴史認識」を改めるよう要求。これに対し、安倍首相は「我が国の考えを曲げてまで国交はできない」とコメント。もうこれではどうにもならない。
 対中国・韓国問題について、あるジャーナリストは「ちょっと冷静期間を持った方がいい」と、長い目で対応して行くことを提議している。我が国の外交のアポリアも深刻だ。
 国内ですぐには「解決できない難問」の最たるものは福島第1原発事故によるセシーム問題だ。セシームが危険で、今だにふるさとへ戻れない自治体がある。セシームの風評被害に泣く農漁業、冷却水が海に流れ出て汚染されているなどのニュースがあとを断たない。廃炉にしてもその処理に何十年もかかるという。我々はこれまで確かに原発の恩恵を受けてきたが、その真逆にこんな危険があるとは・・・。責任は誰もとっていない。とっても解決しない。まさにアポリアだ。
 等々、なんとアポリアが多いことか。毛頭、決して他人事とは思っていない。アポリアに直面して、あるいは間接的に生活が脅かされたり、精神的に苦しむ人がいることを慮ると何とかして解決してもらいたい一心である。国や組織のトップに期するものはあるが、そのトップを選ぶ主体の責任に思いが及ぶと気が重い。私もその一人だから。
 7月は文月(ふみづき)。あのアリストテレスの哲学ではアポリアとは「ある問題について、論理的に同じように成り立つ対立した見解に当面すること」と定義している。書を以てアポリア解決のヒントがあるかも知れない。
 
「7月」の異称  文月 親月(おやつき) 相月 蘭月 涼月 令月 桐月 商月 申月 七夕月 秋初月 上月 初秋 新秋 瓜時 處暑 流火