I have a dream.

 今から50年前の8月28日、アメリカの公民権運動の指導者、マーチン・ルーサー・キング牧師(Martin Luther King, Jr. 1929.1.15~1968.4.4 ) は、25万人にも及ぶ集会で、' I have a dream.' を8回も繰り返し、黒人の公民権の自由を訴える演説をした。そのあと、人種差別の撤廃を訴えた「ワシントン大行進」が行なわれた。アメリカでは、一昨日の28日、記念式典が開かれ、多くの人々が同じ道を行進した。もちろん、オバマ大統領も参加し、演説をした、と報じられている。
 キング牧師の演説 ‘I have a dream’ は、早くから中学校3年生の英語教科書でも扱われており、当時、中学生で、今は学生や社会人になっている人たちの中には、この記事をみて思い出しているのではないだろうか。
 当時のアメリカは、公園のベンチやバスの座席に白人専用があったり、トイレはLADIES, MENの他に、COLOREDと区別され、水飲み場には、FOR COLORED ONLY があり、それらは明らかに古びて、差別されていた。その他、投票権公民権でも差別され、経済的にも黒人は貧困者が多く、100年前のリンカーン奴隷解放宣言が生かされていないという現実があった。
 オバマ大統領は、「キング牧師の演説とワシントン大行進があったからこそ、公民権法や投票権法が成立し、より自由で公平な国になった」と演説し、キング牧師の功績を称えた。確かに、十数年前に渡米した時には、前例のような差別はみかけなかった。また、たまたま、中間選挙のときで、ホームスティ先の主人につれられて投票所へ行くと、投票は整然と行なわれていて一切人種間の差別は感じとれなかった。
 さらに、大統領は「しかし、未だに黒人の失業率は白人の倍近いままだ。人種間の福祉面での格差はますます拡大している。我々全員が、肌の色ではなく、人格そのものによって人を評価しているのか、自問することがふさわしいと思う」と、キング牧師の理想により近づく努力をすべきだと述べている。
 キング牧師の演説は17分だった。中学校の教科書には演説の中から、次の二つが紹介されている。(教科書は一部書き替えているが内容はほぼ同じ))
 I have a dream. One day my four little children will not be judged by the color of their skin but by the content of their character. (我が4人の幼児がいつの日か肌の色ではなく、人格そのものによって評価されるという夢がある)。
 I have a dream. One day the sons of former slaves and the sons of former slave-owners will be able to sit down together at the table of brotherhood. (いつの日か、かつてどれいの子孫やどれい所有者の子孫が同胞のテーブルに一諸につけるという夢がある)。
 まさに、中学生にも理解できそうな易しい英語で、シンプルに語りかけている。しかし、内容は厳しく、堅い信念に満ちあふれている。キング牧師の理想は次の演説にあるのではないだろうか。
 I have a dream that one day this nation will rise up and live out the true meaning of its creed: " We hold these truths to be self-evident: that all men are created equal." (私は、いつの日かこの国が立ち上がって、「われわれはすべての人々が平等に作られていることを自明の真理と信じる」というこの国の信条を真の意味で実現する夢がある)。これはアメリカ独立宣言に拠るものだという。
 無念にも、キング牧師はそれから4年後の1968年4月4日、白人男性によって射殺され、公民権運動道半ばにしてこの世を去った。
 アトランタキング牧師の墓石には演説の言葉が刻まれている。
  "FREE AT LAST. FREE AT LAST. THANK GOD ALMIGHTY I'M FREE AT LAST"
そして、今もなお、His dream lives on.  である。