Try to do your best!

 今、ロシアのソチで第22回冬季オリンピックが開催中である。すでに何種目か終わり、日本選手の結果をめぐり論戦が熱を帯びている。特に、メダルを期待されていた女子ジャンプの高梨沙羅選手が4位に終わり、日本中ががっかりした様子をメディアは詳報している。高梨選手はこれまで謙虚な気持ちで努力し、W杯10勝という実績から「勝って欲しい」と皆が願っていた。
 冷静に思い直してみるとオリンピックで「4位」は立派であることに気づく。高梨選手は飛距離で3位のマテル(仏)よりも2回で1.5mも上回っていたが、着地の飛型点で劣り小差の4位だった。もとより、マテルはW杯でも徐々に力をつけていて優勝候補だったという。
 オリンピックは世界中からエリートが集まり、雰囲気も独特の場、予言通りに「勝つ」ことは至難の業である。スノーボード男子で3連覇に挑んだショーン・ホワイト(米)でさえ4位だったし、女子モーグル上村愛子選手はオリンピックで過去7,6,5,4位と順位を上げてきたが、5回目の今回も4位だった。スピードスケート男子500mの長島、加藤選手、同女子の小平選手もメダルを期待されていたが果たせなかった。
 にも関わらず、我が国では「メダルを取らないと納得しない」という雰囲気が漂う。競技なのだから「相手」がいることを忘れていないだろうか。しかも、すべて世界の「強敵」なのである。各国の情報も少ないせいか、日本選手だけがメダルを取れると思い込んでしまう。
 ところで、かつて親しくしていたアメリカ人の友人は、「日本人はスポーツも学習も結果にこだわりすぎて、かえって伸び悩んでいる。それは、Do your best の発想で、アメリカ人の、Try to do your best との違いかな」と話していた。try(努力する、試みる)することが大事だというのである。その先に「結果」ついてくるという発想。Do your best は「結果」しか求めていない発想だというのである。Try to 〜 との違いは大きく思えてならない。
 高梨選手の好敵手であるサラ・ヘンドリクソン(米)は怪我が災いして21位だったが「沙羅が表彰台に立てないのはとても驚きだけど、彼女が素晴らしい選手であることに変わりはない」と自分のことより相手を思いやる優しさと余裕を感じさせる。それも、Try to 〜で育ったお国柄がそう言わせたのかも知れない。沙羅は17歳、サラは19歳、ともにスキーというスノースポーツを通して人間的にもさらに成長してほしい。
 上村選手は「メダルは取れなかったが、今までで最も良く滑れたし、すがすがしい気持ちです」と安堵の涙をこらえて話した。我々日本人もこのことばを素直に聞き入れて「ホッとした」と思う余裕が欲しいものだ。