世事に問う

 きのう、安倍さんは、憲法9条が禁じる武力行使にあたるとされてきた集団的自衛権の行使について検討する考えを表明した。これまで歴代内閣は行使を認めてこなかったが、行使を可能にする憲法解釈の変更を閣議で決定する考えである。その理由は国際情勢の変化や日本周辺の「脅威」の拡大にあるという。
 当然のことながら、国民の間には「行使」について賛否両論が渦巻いている。そこで、報道各社の世論調査を見比べてみることにしたら、なんと大きな違いがあることがわかった。
 共同通信日経新聞テレビ東京朝日新聞は、賛成がそれぞれ38%、38%、27%で、反対は52.1%、49%、56%である。明らかに「反対」が「賛成」を上回っている。
 毎日新聞、読売新聞、産経新聞は、全面賛成がそれぞれ12%、8%、7.3%、限定的行使賛成が44%、63%、64.1%。反対は、38%、25%、25,5%で「賛成」が「反対」を上回っている。「限定的」行使は安倍さんが強調していることである。
 NHKは、憲法改正または憲法解釈の変更による賛成が34.1%、反対41.5%となっている。NHKは「反対」がやや多く、無回答・分からないが24.4%であった。
 選択肢の差が賛否に影響していることもあるが、国民も明確に意思表示しかねているように読み取れる。つまり、もっと時間をかけて考える必要があるということであり、また、急げば急ぐほど他国を刺激することにもなる。
 案の定、韓国や中国は敏感に反応し、「日本は再び軍国主義国家に逆戻りしようとしている」と厳しく非難し警戒を強めている。安倍さんは集団的自衛権の行使は戦争の抑止力になると説明してるが、他国は全く反対の見方をしている。だから、安倍さんは中国や韓国に出向いて未来志向の平和秩序を構築するよう呼びかける努力をしてもらいたい。
 そして、我が国には「戦争をしない国」という戦後守り続けてきた基本理念があることを再確認してもらうことではないか。