錦織選手、全米決勝へ!

 テニスの4大大会の一つ、全米オープンで錦織選手(24)が決勝に進出し、国内はもとより海外でもビッグニュースとして報道された。我が国テニス史上初の快挙であるという。ニューヨークでの出来事である。準決勝で勝った相手は世界ランキング1位のノバク・ジョコビッチ(27・セルビア)選手。彼は、2011年に4大大会で全豪、ウィンブルドン、全米の3大会に優勝し、これまでシングルスで45勝している強豪選手である。錦織はランキング11位で、予想はジョコビッチが断然優勢だったが下克上の結果にワールドニュース登場と相成った。
 敗れたジョコビッチは「錦織はしっかり準備ができていた。彼の勝利を祝福したい」とコメントし、勝者を讃えた。思いがけない敗戦だったにも関わらず、素直に勝者を讃える心の豊かさ、マナーはさすがランキング1位の選手であると感銘した。35度の暑さ。それは両者にとって同じ条件であるが、この条件に対する準備が錦織の方がよかったことをジョコビッチは認めた。裏を返せば、「自分は準備が充分でなかった」ことを告白したことになる。
 世界チャンピオンといえどもこのように試合に負けることもある。彼も「一人の人間」だからだ。ましてや対戦する相手全てがあの手この手で「打倒・ジョコビッチ」と立ち向かってくるからどの試合も気を抜けない。それでも勝ち続けてきたのである。今朝、そのジョコビッチに錦織が立ち向かい3−1で勝利した。
 錦織も爽やかで、しかも謙虚な選手である。試合が終り感激に浸る間もなくジョコビッチ選手へ駆け寄り健闘を讃え合った。その時点においても1位と11位のランクはまだそのままであり、錦織は今まで同様ジョコビッチを尊敬する気持ちに変わりはないことをインタビューから窺えた。彼もまた素晴らしい人間性の持ち主と見た。
 錦織は中学生の頃から渡米して、外国での生活に何ら支障がないという恵まれた環境で育ったようである。それでも人知れぬ苦労はあったはずで、それらを克服しながら練習に集中し、心身ともに強靭な青年に成長した。どの相手選手と比べても身長、体重共に一回り以上に小さいが、メンタルや考え方、創造性において相手を上回り体力以上の力を発揮できたのではないか。
 コーチのマイケル・チャンも特に錦織のメンタルを鍛えてきたので、勝利の一因にあげている。それは具体的にはどういうものなのか知りたい。チャンは外国人なので日本人とは違う鍛え方をしているはずである。単なる「根性論」ではないと思う。日本人が外国人に弱いのはメンタル面であると指摘されているので、錦織選手を手本にした方がいい。
 決勝は9日にランキング16位のマリン・チリッチ選手(25・クロアチア)と戦う。ランキングは錦織より下だけどそれには関係なくどちらにも勝利のチャンスがある。ちなみに相手は198cm、82kg、ツアー11勝の選手。錦織選手への期待は大きい。自分の考え方、創造性、人間性をラケットに託して戦ってほしい。