バックカントリースキー

 1月2日、新潟県湯沢町かぐらスキー場で行方不明になった男女3名のボーダーが、4日午前、ヘリにより発見され無事救助された。「ゲレンデのコース外に出てスノーボード中、道に迷った。夜は雪に穴を掘って寒さをしのいだ」という。他にも雪崩に遭うなどの事故が発生し、警察や地元の人たちが救助に追われた。
 スキー場は雪を踏み固められ、平らに整地されている。その両側は林や急な崖になっていたり、2〜3mもの深雪になっていて進入すると危険なところにはロープやネットを張り、「進入禁止」(Keep Out)の表示がある。ゲレンデは、ほぼ安全地帯である。
 ところが誰も滑っていない、手付かずの自然を満喫しようとして、ロープをくぐり山林地帯のスキーを楽しもうとする人がいる。確かに雪原を歩き、斜面を滑走しながら大自然と渾然一体となり楽しむスキーは快感そのものであろうと思う。滑るだけでなく、珍しい植物や生息動物、野鳥の生態を観察したり、ビバークなど楽しみ方はさまざまであるが、危険も伴う。このようなスキーをバックカントリースキーと称している(ボードを含む)。
 近年、バックカントリースキーを楽しもうとするスキーヤーが多くなっているようだ。特に、ボードは板の幅が広いので少々の深雪でももぐらずに滑れるので、急斜面や山林でも挑戦したくなる。しかし、楽しさのあまり、方向感覚や距離感を喪失し、戻れなくなったり、気象の急変により寒さに襲われ生命を脅かされるというリスクを負うこともある。前述の遭難事故はその事例であると思う。
 よって、バックカントリースキーは、十分な服装や予めコースを確認し、雪崩の危険性や道標、天候などを調べて臨むべきで、ある意味では、登山や山岳スキーの感覚が必要である。遭難すると、すぐには病院に行けないし、レストハウスもなく、パトロールも呼べないし、寒さ対策、食料調達は避けて通れない。自然の脅威を侮ってはいけないということである。
 海外スキーでも、危険なところはたくさんあるがコースを外れなければ安全である。道標やコース案内は実に丁寧に表示されている。それでいて、4,000m〜5,000m級のアルプス山脈や雲海、サンピーラー(光の柱)、ダイヤモンドダストなども見ることができる。居ながらにしてバックカントリースキーを楽しめる。
 若いころ仲間たちとスキーを担いで2600mの雪山を直登して、雄大な斜面を滑ったが、その時は地元の人にガイドをお願いした。とにかく、我が国でも安全なバックカントリースキーを普及させたいものである。

 こちら側は整地されたスキー場。小屋の向こう側は深雪地帯で立ち入り禁止(白馬スキー場)。右は3〜4mの深雪。ここに埋もれたら自力では脱出できない(ニセコスキー場)

 アルプ山脈を眺めながら食事をする夫婦(オーストリア、レッヒにて)。右は、逆光の太陽光線によるサンピーラー。周囲はダイヤモンドダスト(同、サンクトアントンにて)