ふるさと考

 きょう、都内市ヶ谷で岩手県南8つのふるさと会の代表者会議があった。各ふるさと会は市や町単位で結成され、総会、交流会などが定期的に開かれている。参加者は70〜80人くらいで、その平均年齢は70歳前後。岩手から上京するのに十数時間かかる時代に青春を送った世代が中心である。帰郷したくともすぐには帰れず、我慢を強いられた。だから、皆、望郷の念が未だに心から離れない。
 各ふるさと会は幼なじみの仲間もいれば、ふるさと会で知り合った仲間もいる。まさに同郷の誼(よしみ)で、酒を飲んでも無礼講で楽しめる。ところが、どのふるさと会も結成来20数年経っているので、お互いに高齢化し、気がついてみると何年も年下の会員が入っていない。
 なぜ、若い人が入会しないか。きょうの会議でもこれが議題になった。何が入会を阻んでいるのか。(1)懇親会の会費が高い。(2)会場までのアクセスが不安。(3)高齢化。(4)集団化を嫌う。(5)ふるさと観の相違、などが考えられる。
 対応策として、会費は、都内では7,000〜8,000円が相場。もちろん、会食が含まれている。あとは会場費が安い会社の施設などを利用する、郊外の準都市に会場を移すなどが考えられる。アクセスは、駅にもホテルなどにもエレベータがあり、以前よりはかなり良くなっている。会場もほとんど椅子席であることのPRを徹底する。
 高齢化については、70〜80歳でも元気な人が多い時代なので、この世代にもっと呼びかけて参加してもらい、そこから60代、50代へと輪を広げていくようにして、高齢化のイメージを変えたいものである。
 50〜40代は学校では集団教育を受けているが、社会人になったら集団化を嫌い、気の合うせいぜい3、4人の仲間と行動する傾向にある。その世代と70歳代との間には集団化の他にもいろいろな面で乖離があり、一緒になれないでいるように思う。新幹線で、2時間余で帰郷できる時代に育った若者とは望郷の念においても温度差があるので、高齢者の方が歩み寄ってその差を埋めていく努力が必要であろう。
 ふるさと会の有り様が問われ始めて久しいが、単に一昔に戻すのではなく、今がすべて新しい時代であるとの認識のもと、望郷や懐郷など心情的なものだけでない新たなふるさと観を醸しだしていく工夫が求められているのだと思う。同郷の仲間と世代を超えて、ふるさとを語り合い、ふるさとに感謝することの意味合いは貴重であると思う。だから、ふるさと会を次世代に残しておきたいのである。

市ヶ谷の外濠沿いには大学や企業のビルが林立。あと1ヶ月もすると桜並木で賑わう外濠公園