森林浴

 先月末、妻と2泊3日の温泉と森林浴旅行を楽しむ。行き先は、我が家から車で3時間ほどの川治温泉とすぐ隣りの湯西川温泉(いずれも日光市)。過去、何回か行っているが、時期的に森林浴を期してここに決めた。
 東北自動車道・宇都宮から日光道に入ると俄然森林が多くなり、ホッとする。今市市街地を通り抜け、鬼怒川温泉街、そして川治温泉へと通じている。森林や鬼怒川の渓流は相変わらずで、心が洗われる思いに・・・。
 今時、宿泊したAホテルは鬼怒川と男鹿川が合流する渓谷に建っていて、さらに野岩鉄道線の陸橋が天井を走っている。秋は紅葉が美しいという。従業員の接客教育が徹底していたし、温泉も快適で、料理にも充分手を加えており美味しかった。温泉旅館の経営に熱心な姿が伝わってきた。
 
鬼怒川と男鹿川(手前)の合流地点。歩道橋(手前)と野岩鉄道陸橋 右は五十里ダム 
 もう十数年前になるが、ひのき湯を売りにしていた旅館に宿泊したことがあり、今も健在かどうか当館の従業員に尋ねたところ、「今は某社が経営しています。すぐお隣りのホテルも経営者が変わりました。一昔前は数十軒あった旅館・ホテルが今は10軒ほどになりました」と寂しそうに話してくれた。当館が必死になって経営に当たっている理由が分かった。
 翌日は、五十里(いかり)ダムや川俣ダムを見ながら湯西川へ。ダムの水量は十分あり、青々としてきれいだ。森林もいよいよ深く、車中ではあるが森林浴を楽しむ。3時過ぎにBホテルにチェックイン。湯西川では歴史のあるホテルで、平家の落人集落をイメージした炉端焼きを継承している。やはり湯西川の渓谷に建っていて、ヤマセミの大合唱が印象的だった。
 B館の炉端焼きは楽しめたが、それ以外にこれといったアイディアが伝わってこなかった。老舗のよさも生かされていないように思えて残念だった。湯西川は夏は涼しく、冬は積雪も多く、平家が隠れ家として選んだ秘境だけあって、この独特の温泉街を愛している旅行客もたくさんいると思うので、その期待に背かないよう努力してほしい。

      清流の湯西川              奥深い湯西川の山林
 川治、湯西川にかぎらず、我が国はもともと人口減が続いていて、その上レジャーが多様化して「温泉」の選択肢も大幅に減少している。旅館・ホテル数がバブル時代と同じだとすると、残念ながら自然淘汰が生じてくる。両温泉街は今はそれぞれ十軒ぐらいというが適正規模とも言える。その中で、ぜひ、切磋琢磨しあい温泉愛好者を楽しませて欲しい。 
 最終日は、湯西川から会津西街道を20キロほど北上してみた。この街道は、江戸時代、今市と会津若松(約130キロ)を結ぶ主要道路で、参勤交代や物流の要所として重宝がられた。今もどこまでも森林が続き、いかにも「街道」にふさわしい雰囲気が残されている。
 帰路は川治へ戻り、日塩もみじラインで塩原へ。新緑のトンネルの連続で森林浴を十分味わえて満足。首都圏を少し離れるだけでこんなにも森林があるのに、出掛ける機会が少ないことに気づかされもした。

       会津西街道              日塩もみじライン