消光の日々、されど

 9月も半ばを過ぎた。例年、残暑が厳しいのに低温の初秋が続いている。ということは、気象が不順であることを物語っている。このところ一日中快晴の日がなく、地域によっては豪雨により大きな被害がでている。
 10日からの集中豪雨で、茨城県常総市(もと水海道市など)の鬼怒川が140mに渡り決壊し、濁流が住宅街に流入。たくさんの家屋が流されたり、半壊するなどの被害が出ている。3人が亡くなっている。また、15名が行方不明ということで捜索されていたが14名が避難場所等で生存が確認された。(1名は誤情報)
 決壊したあたりの鬼怒川は、我が家から車で30分ほどで行ける位置にある。堤防もそれほど高くなく、地域住民にとってはむしろ親しみ深い河川である。これまでに氾濫もなく安心して暮らしていたと思う。よって、特別警戒警報が出ても、すぐには避難しなかったために流されてしまったのではないか。今次はまさに未曾有の大雨で、行政も含め判断に戸惑いがあった。鬼怒川を挟んでのどかな田園風景が広がるこの地域にとっても避難のあり方が問われることになった。この鬼怒川はあと少し南下すると利根川に合流し、その役を終える。
 12日夕刻のこと、ある会議を終えて、数人で近くの居酒屋で一献を交わしていた。30分位すると、ウーロン茶を飲んでいたKさんの身体が左横に傾き始めた。「どうした?」と仲間が尋ねると「大丈夫、大丈夫」と、Kさんがしっかりた声で応答。しかし、自力では起き上がれない状況であることが分かったので「救急車を呼ぼう!」と決断。
 結局、脳梗塞で左腕、左脚が麻痺していることがわかった。今、入院して治療中であるが、意識はしっかりしていて、麻痺も改善しているようだ。全く元気な本人にとっても不慮の事故であったと思う。ただ、仲間がいるところで起きたために早い対処ができたことは不幸中の幸いであった。完治を祈るのみである。
 鬼怒川沿岸で被災した住民は復旧に向けて大奮闘している。中には、高齢者や病状の人もいるので耐え難い環境にある。比較的近いとは言え、何の役に立てず忸怩たる思いであるが、せめて気持ちの上で連帯感を表明したい。そして、大水害にしても、Kさんのことにしてもこの時代では日常的に起こり得ることを再認識しようと思う。また、昨今の世事や家族、健康、高齢などに思いを巡らすと、まだまだ、消光(たいした事もせず毎日を過ごすこと)の日々を送れる環境にないことも受け入れないと・・・。