失敗は必然 成功は偶然

 私は小学校3年生あたりから野球を始めて、60歳頃までソフトボールを含め楽しんだ。今思い返してみると、いろんな大会の試合に出て優勝、時にはヒーローになったこともある。しかし、私はもともと本番に弱く肝心なところで失敗を繰り返した。優勝したのも、ヒーローになったのも1,2度しかない。
 スキーを本格的に始めたのは35歳だった。早速、3級、2級、1級の検定試験を受検したがいずれも2〜3回目に合格している。その後挑戦した準指導員検定は3回目に合格した。つまり、いずれも1〜2回は不合格(=失敗)を経験している。正指導員は後期高齢者入り前の最後の挑戦として2年前に受検したところ一発合格だった。
 いずれも趣味の世界のことであり、本職の仕事や人生を左右することではなかったが、スポーツだけでなく他においても失敗=うまくいかないことの繰り返しであった。そのたびに、落ち込むことはあったが諦めて止めてしまうことはなかった。それは自分のことながら不思議だなぁと思っている。もともと能力がないので、何をするにも他人の数倍努力しないと一緒になれないのに、努力もせず「受験(検)」するから失敗することになる。
 では、高齢者になった今、長いスパーンで人生を振り返ってみるとどうか。なんと大きな失敗の山が見えてくる。忸怩たる思いで額に汗をかいている。それでも堪えられたのは、たくさんの人に迷惑をかけたり、嫌な思いをさせたりしながらも支えられてきたことに尽きる。成功=うまく行ったことはあったのか。残念ながら「これだ!」と言えるものはない。ただ、成功の反対は「失敗」ではなく「諦めること」であるという説に納得している。
 私にとって「失敗は必然、成功は偶然」は至言であり、人生の真理を物語っているように思う。だからといって、失敗は当たり前だとか、責任を他に転嫁して「気楽」になろうなどという気持ちはない。ましてや、他人の失敗をなじるようなことは断じてあってはならないと思う。
 「勝ちには偶然の勝ちがあり、負けには偶然の負けはない」これは、江戸時代の剣術の達人・松浦清が著した「検述書」にあるという。これが、「失敗は必然、成功は偶然」の元祖になっているのかも知れない。剣術に限らず、広く人間の生き方に当てはめて見ると、立派な人生訓になる。