相撲本来の伝統を忘れていませんか

 大相撲九州場所は昨日、千秋楽を迎え、横綱白鵬の通算40度目の優勝で終えました。優勝40回は前人未到の大相撲新記録で、まさに偉業と言えます。驚いたことに、そのインタビューで、横綱白鵬横綱日馬富士(途中休場)による暴行問題について触れるという場面がありました。優勝インタビューではまさに異例の発言でした。
 今場所前、鳥取で巡業中の夕食時に、日馬富士は指導を無視した貴ノ岩関を殴るという事件が発覚し、連日報道されました。貴ノ岩の師匠の貴乃花親方は事件現場の鳥取県警に被害届を出すという異例の展開となりました。貴ノ岩は怪我を理由に今場所を全休、相撲協会の事情聴取も拒否、貴乃花親方も協会、マスコミの取材にも全て無言を貫いたまま千秋楽を迎えるという状態が続いています。
 相撲界ではこの類の暴力はあっても「先輩による後輩の指導」ということで、いわば泣き寝入りしていたかも知りません。今回は、元横綱貴乃花親方による「被害届」により、指導の名の下で行われてきた体罰を「暴力行為」として訴えることになったのです。過去においても暴力行為により相撲界から追放された例はありますが、親方が正式に警察に届け出ることは異例といえます。
 本事件は、たまたまモンゴル出身力士の酒席で起きていますが、相撲界全体に及ぼす影響は大きくなるばかりです。角界では稽古中は「指導と体罰」の区別がなく、また、上下関係も確立されており、体罰には堪えるしかない世界になっているようです。それに耐えて強くなった例もたくさんありますが、それは相撲本来の姿なのかどうかを追求してもらいたいし、相撲界だけを例外として見てきた我々国民も考え直す機会にすべきです。
 本件についてまだ詳しいことは不明です。訴状もわかりませんし、親方は何を訴えたいのか、それによって何を改善しようとしているのかなど、最も保守的な相撲界だけに難問を抱えることになりました。
 相撲界はこれを機に、相撲本来の良さを再確認することで、古来の伝統を復活してもらいたい。そのために今回の訴えが生かされることを願いたいと思います。