胃カメラ&ピロリ菌

 10日ほど前に、毎年行なっている胃カメラによる胃検診を受けた。昨年まで何年かは同じ病院で受診していたが、いわゆるセカンド・オピニオンという意味で今回は他の病院で行うことにした。
 モニターテレビとベットだけの診察室に案内され、早速、看護師に、まず、胃カメラを喉から入れるか、鼻から入れるかを聞かれたが、鼻から、を希望。次に、胃壁をきれいにする液体の薬を飲む。そして、鼻腔の通りを良くするための薬を2回噴霧。その後、鼻腔奥に麻酔薬を噴霧。
 数分待つと、医師が入ってきて「はい、それでは始めますよ」と言って、先端に明かりのついた胃カメラを手にして鼻腔に入れた。苦痛はほとんどないが、臆病者の私にとっては何とも不気味であった。モニターテレビには真っ赤な胃壁が映っていた。思っていたよりも楽に終えた。その間、3〜4分。
 ベットから起き上がると、医師が胃壁の8コマの写真を手渡してくれて、症状について説明。「一カ所に胃炎があり、ピロリ菌やがんの疑いもあるので一応生検をします。10日くらいしたら結果がわかるので来院してください。おつかれさま」。昨年までは、その場で「異状ありません」だったので、不安がよぎった。
 ピロリ菌? 耳にしたことはあるが、ナニモノかは分からないので、調べてみた。正式には、ヘリコバクター・ピロリ菌(Helicobacter pylori) といい、らせん状の細菌である。学会によると、胃潰瘍・十二指腸潰瘍からそれぞれ94%・89%のピロリ菌が検出されていることから、高い確率で胃がん発生とも関わっているとして注目されているようだ。
 もともと「胃は酸が強く細菌は生息しない」というのが医学会の固定観念であり常識だった。1983年、オーストラリアの病理医ウォーレン博士と臨床医マーシャル博士が研究の末、胃のピロリ菌を発見した。しかし、学会等にすぐには認められず、さらに研究を重ねた結果、2005年、2人はその発見者としてノーベル賞を受賞。
 一気に、胃がんや十二指腸がんの病原はピロリ菌であることが認められたのであるが、思えばつい最近のことである。ピロリ菌は他の臓器にも生息するので、ほかのがんの病原としても警戒されている。
 さて、そんな知識を注入して、待つこと10日。きょう、結果を聞きに病院へ。呼び出されて、医師の前へ。例の写真やカルテを見ながら「ピロリ菌もなく、全く異状はありません」と一言。一瞬、ホッとしていると、先生は「胃カメラは1年に1回はやった方がいいですよ。あと、肝臓や腎臓、前立腺などの検査もしておくことを奨めます」と付け加えた。
 生まれてこの方、毎日最も負担をかけているのが胃だけに、心配していた。これで一安心ではあるが、加齢を考慮すると用心に越したことはない。ある医学専門家によると、病気の68%は食べ物に関係するという。その食べ物を体内で最初に受け止めてくれるのが胃袋。それゆえ、大事にしなければと思う。そして、食べ物そのものも吟味すべきであろう。
 参考までに、例のピロリ菌の除菌作用によい食べ物としては、ヨーグルト、ブロッコリの新芽、梅、緑茶、にんにく、わさび、しょうが、キムチなど。また、ある書には、各種野菜と果物の摂取、そして減塩とある。
 前回の当ブログで、津村節子著「紅梅」により、作家吉村昭氏の壮絶な闘病生活を知ったのであるが、私にはとても堪えられないという悲痛な思いで読んだ。それだけに、臆病と言われても病気だけはずっと先延ばしにして欲しいと願っている。