「安全」がテーマの夏祭り

 昨日、町内の神社の夏祭りがあった。日中でも22°Cという涼しさで、神輿パレードには例年になく参加者が多く、大いに盛り上がった。子ども神輿では200人近くの子どもたちが町内を歩いた。大人の神輿には、若衆の担ぎ手が他の町会からたくさん来てくれて、連帯感がみなぎっていた。
 この神社は300年来、国や地域社会の「平穏安泰」「五穀豊穣」(ごこくほうぎょう)、そして人々の「厄病追儺」(やくびょうついな)を願う住民の心の拠り所となっている。これはまさに人類の願いそのもの、今もって永遠の課題である。
 我が国では、昨年の東日本大震災で多くの尊い生命が奪われ、また、原発事故により多くの住民が未だに避難生活を送っていることからも決して平穏安泰の国や地域にはなっていない。そのうえ、30年、40年先の経済状況も心配だと言われている。ついつい、神にお願いする気持ちにもなろうというものである。
 この夏祭りは、昨年は大震災直後でもあり「自粛」する方向へと推移していたが、「安全」をテーマに実施している。今年度も検討した結果、同じ主旨で実施することになった経緯がある。ここで言う「安全」とは生命の安全である。祭りを通してその「安全」について再確認し合おう、ということである。
 祭りの期間中、町内街頭に提灯を掲げている。提灯の灯りは今ではもう夏の夜の風物詩となっている。200余の提灯は例年、祭事担当者が電柱間をつないで、しかも高い所に取り付けている。大変危険な作業である。そこで、「安全」に照らし合わせて、この作業を昨年に続き2年間中止したのである。従って、わが町内では提灯の灯りを見ることはできない。
 作業中にけがをしたり、生命を亡くすようなことがあってはならないし、祭事は「例年通り」に行うのが無難であると言われているだけに、提灯中止は大英断である。大震災を生きた教訓にすべきである、という考え方を貫いている。単に神頼みにするのではなく、自ら安全対策を具体化したいい例である。
 今年は、他の作業も安全に行われた。パレードではけがをしたり具合が悪くなる人はいなかった。パレードの時間を短縮したり、水分補給の徹底を図っている。長年、役員として祭事を執り行っている皆さんに感謝しつつ、「平穏安泰」を願う祭りのささやかなリポートである。