読書アラカルト(8)「日本人の英語」マーク・ピーターセン著
この書の初版は1988年4月20日で、昨年までに69刷も発行されている。著者のMark Petersenは、アメリカのウィスコンシン州出身、コロラド大学で英米文学、ワシントン大学院で近代日本文学を専攻、1980年フルブライト留学生として来日、東京工業大学で「正宗白鳥」を研究し、現在は、明治大学政治経済学部教授である。内容の一部を紹介すると・・・・・。
私(著者)が勤務する明治大学のクラブジャンパーの背に大きく、派手な文字でUniversity of Meiji Tennis Clubと書いてあるが、これは間違いである。Meiji University Tennis Club が正しい。the University of Tokyo や the University of Shinshu, the University of Hokkaidoなどの言い方は正しい。その違いは、東京や信州、北海道は土地の具体的な一部として実在する「物」であり、Meiji というのは、具体的に実在する「物」ではなく、物に形容的に付けられる単なる「名」にすぎない。
それゆえに、University of Meiji は明治大学ではなく「明治な大学」などというような、わけの分からない言い方になる。the University of Tokyoは「東京大学」であり、以下、信州大学、北海道大学となる。この of は所有的、属性的な関係を表す。
にも関わらず、Shinshu University、Hokkaido University などの言い方にしているようだ。しかし、これ自体自然な英語であって別に問題はない。ちなみに、「日本大学」は、Nihon Universityであり、Japan Universityとは言わない。
- 作者: マーク・ピーターセン
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1988/04/20
- メディア: 新書
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Genji Hikaru なんて、あんまりだーーーHideyo Noguchi, Soseki Nastume・・・英語だからといって、人の名前を逆さまにする時代はとっくに終わっている気がする。アルベルト・アインシュタインをアインシュタイン・アルベルトとは言わないだろうし、ジョン・ウェインをウェイン・ジョンとも言わないだろう。
日本人自身が順序を逆さまにしてきたから、そうなったに過ぎないのである。ふつうのアメリカ人は、逆さまの名前が日本人のほんとうの名前だと思い込んでしまっているのである。日本の国際化のためには、このような明治時代からの考え方をこのあたりでやめてもよいような気がするが、どうであろうか。
重箱の隅を突っつくような感じもするが、そうではなく、日本人の英語に対する認識や感覚を問われていると捉えるべきである。英語をコミュニケーションの手段としてではなく、文法を重んじた英語解釈という学者たちの学問にすぎなかった明治時代の英語から未だに抜けだせないでいることを指摘されている。例の a chicken は 欧米人は chickenのつもりであることは理解するであろうが、英語の認識としては違和感を覚えるはずである。
著者はユーモラスに「日本人の英語」の問題点を示して、画一的な文法の縛りから開放し英語的発想を導き出そうと試みている。明治大学が「明治な大学」にならないようにするために一読をすすめたい。岩波新書 700円+税