アルジェリア事件

 16日、アルジェリア南東部イナメナスにある天然ガス関連施設の日本企業がイスラム武装集団に襲われ、人質にされた日本人17人のうち9人が殺害され、未だに1人の安否が不明という痛ましい事件が起きた。他にも同じ施設で働いていた外国人も殺害された。日本人7人の生存は確認されているが事件の背景は複雑で、難解であり、この痛ましい犠牲が再発防止に生かされるのかも定かではない。
 ところで、私自身アルジェリアについてほとんど知らないことを恥じながら、調べてみた。 
 国名は、アルジェリア民主人民共和国、首都はアルジェ。公用語アラビア語。人口3,489万人(2008年)、1人あたりのGDPは約4,400ドル、周辺国はモロッコチュニジア、マリ、リビアニジェール。地中海を隔てて北には旧宗主国フランスがあり、イタリア、スペインも隣国となっている。1962年7月5日、フランスより独立。
 アルジェリアの国土の大部分は砂漠で、南にはサハラ砂漠があり乾燥した平原地帯である。国民の95%はアトラス山脈や地中海沿岸の北部に居住している。気候は南カリフォルニア(日本では新潟県)と同緯度なので温暖で、雨量も多く、小麦の他にオレンジ、オリーブなどの柑橘類を産出し輸出している。それ以上に大きな資源は、天然ガスや石油、鉄鉱石、リン鉱石。特に、石油の原価が上昇し貿易黒字が増大している。
 主な輸出国は、アメリカ(22,8%)、イタリア(16,2%)、スペイン(10,4%)、フランス(10%)。輸入国は圧倒的にフランス(28,2%)。また、フランスには100万人のアルジェリア人が居住し、自国へ送金し、外貨を稼いでいる。
 日本との関係は、かつては日本人在留者が3,234人(1978年)もおり、日本企業に多くの開発事業の発注があり友好的であったが、近年はアルジェリア国内の内戦や経済の低迷により関係も希薄になっているようだ。
 今次事件に遭った日本の会社はアルジェリアとイギリスのエネルギー開発事業(プラント建設)に参加しており、地元アルジェリアの経済発展にも大きく貢献していたのであるが、内戦に巻き込まれてしまったのが悔しい。アルジェリアにはこの会社の他に、数社の日本企業が高速道路建設や液化石油プラント建設に携わっている。さらに北アフリカだけでも、モロッコチュニジア、ナイジェリア、エジプト、スーダン南スーダンなどにも日本企業が進出している。
 内戦となると他国が干渉する余地はほとんどないようだ。が、この教訓を国をあげて生かさないと犠牲者に申し訳がたたないし、この先、海外で安心して働けないと思う。日本は企業が世界中に進出して当事国とは民間外交的な役割もしているが、今回の事件によりその限界を思い知らされた。
 民間任せではなく日本の企業や日本人が多く在留している国とは国が率先して友好外交を展開して日本国や日本人をよく理解してもらう努力が必要だ。お世話になっているところにはちゃんとあいさつをしておくべきだ。
 アルジェリアと我が国との関係は決して悪くはなかったようだが、たびかさなる内戦という厳しい国情により人命優先の交渉は成らなかった。いずれにしてもテロ行為は厳しく批難されてしかるべきだが、いつの日か手を握り合う時が来てほしいものだ。それまでは、我が国は企業の海外進出や外交のあり方について考えなおさねばならないと思う。