7年後の東京五輪

 8日、東京は、2020年夏季五輪(パラリンピック含む)開催都市に決まった。決選投票で、60:30でトルコのイスタンブールに圧勝した。立候補したマドリードを含む3都市はそれぞれによさをアピールしたが、IOCは、政治、経済、治安等で東京が他市に優るとして推した。東京は56年ぶり2度目の開催になる。
 9日と10日、たまたま用事があって東京へ出かけたが、上野、秋葉原、池袋辺りに関してはいつもと変わりがなかった。大型のビルやデパートにも「祝・・・・」のような垂れ幕はなかった。特別セールもやってない。唯一、新宿にある都庁はライトアップした、と朝刊が伝えている。

  秋葉原駅前                池袋西武デパート

  池袋駅前通り               池袋のある商店街
 さて、7年後、東京というよりも、日本はかくあるべきだが・・・。
 今回、立候補したものの最も懸念されたことは、東電福島第一原発の汚染水問題だった。ここへきて放射性セシウムを含む高濃度の汚染水が外洋に流出していることが判明し、一部で漁業を停止する状況にある。しかし、安倍首相はプレゼンテーションに出席して「「状況はコントロールされており、問題はない」と明言。「この一言で東京の懸念が払拭された」と多くの外電が伝えている。7年後には、国を挙げて本当に汚染水をこの世から無くさないといけない。五輪だけのためではなく。
 五輪には、中国、韓国、北朝鮮等の隣国も参加する。今は、そのどの国とも仲良くできずにいる。2020年の東京五輪開催にも冷ややかな感じである。このままだと、五輪で日本がこれらの国と対戦すると、異様な雰囲気になり、選手たちは実力を発揮できないだろう、と思う。五輪を通して、各国同士がさらに友好を深めていくのが本来の姿なのだから、ここは政治の出番により、「正々堂々と闘える環境」を作るべきだ。
 経済波及効果を期待し、東京招致を歓迎する声もある。東京都は、2013〜2020年の間に約2兆9600億円に上り、約15万人の雇用を生み出すと試算する。選手村ができる予定の東京の晴見地区のマンションには来場者が増え、「オリンピックがくるので買うことを決めた」という人が現れた。競技場新築や交通網の改善等で建設業界は大喜びだ。株も大幅に上昇。果たして、この経済効果が国の経済にどう反映するか、国民の懐がどう改善しているか。
 選手の養成にも拍車がかかる。今の小学校高学年から中学生、高校生が中心になる。とはいえ、子どもたちをスポーツ漬けにしないで欲しい。きちんと、学業をさせて、知的能力も鍛えてもらいたい。日本が五輪で勝てないのは「筋力」や「根性」だけに頼っているという反省も出ている。健全な教育によって選手養成を行なうよう願いたいものだ。断じて、選手を「消耗品」にすべきでない。
 「なぜ、東京開催か」という理念が国民の間では曖昧だった感じがする。ところが、安倍首相の例の演説で「原発事故」が表出すると「「復興五輪」というコンセプトが生まれた。「後付け」という印象は否めないが、原発事故で未だに自宅に帰れない地元の人や漁業従事者のことを思うと、五輪を起爆剤にしてでも、復興の速度を上げないとこの「理念」がうそになる。それは、すべての国民の気持ちであると思う。
 7年後、かくいう自分はどうなっているのか。全く分からない。生きていれば80代の大台に乗っているはず。もちろん、健康を維持して、若者たちの活躍ぶりを応援し、感動を味わってみたいという願望はある。また、日本は政治、経済、教育、文化においても世界に誇れる健全で、民主的な国家であることを包み隠さず示せたら、東京五輪開催の理念や意義が満たされることになる。そんな7年後を夢見ている。