要介護リスク

 高齢者になると、やせた男性は太っている人と比べ、介護が必要になるリスク(危険性)が約2倍高い、という調査結果を都内のある医療センター研究所チームがまとめた。栄養の低さが健康に悪影響を与える可能性が示されたとしている。これはチームが昨年6月までの10年間、群馬県草津町の高齢者計1620人を追跡調査した結果によるものである。
 男性では、体格指数BMIが最も低いやせグループ(15.9〜21.0)は、最も高いグループ(24.9〜39.9)よりも、介護が必要なリスクが1.9倍だった。また、アルブミンコレステロールなどでも、栄養状態を示す数値が最も低いグループは、最も高いグループに比べ、リスクが高かった、という。一般的に、太っている人(肥満)は何かにつけて「要注意」のレッテルを貼られてきただけに「おやっ」と思ったところである。
 早速、私も気になって直近の人間ドックの結果を取り出してみると、BMIは24.0(身長168.7cm、体重68.2kg)、総コレステロールは229(基準値130〜219)とやや高く、どちらかと言うと「太っている」部類に入る体型である。従って、BMIコレステロールを気にしながら食事をし服薬もしてきたので、この度の調査結果に照らしてみると「取り越し苦労」をしていたことになる。
 最近、他の医学界でも血圧やコレステロールの基準値を全般的に見直すべきであるという見解を出している。日本の基準値は諸外国に比べても「厳しすぎる」というのである。しかし、まだまだこれまでの基準値を信じる国民が多く、その壁は厚く高い感じがする。今回の調査は高齢者を対象にしているものの、その壁に風穴を開けることになれば基準値の見直しに拍車がかかるのではないか。ちなみに、今回の調査結果については、今月14日開催の日本老年医学会学術集会で発表されることになっている。
 当医療センターの研究部長は「体力低下やかむ力の衰えなど様々な要因で、高齢者は栄養不足になりがちだ。太ることを気にして動物性蛋白質を敬遠せず、バランスよく食べてほしい」と話す。高齢者向けの有り難いコメントとして受け止めていいのではないか。あわせて、「取り越し苦労」を少しでも軽減するような研究をさらに続けて、説得力のある新たな基準値を発表するように医学界にお願いしたい。