卒後教育の大切さ

 きのう、統一地方選挙の前半戦が投開票された。10道県の知事選では全員現職が勝った。つまり、支持母体よりも『現職」が強かったことを物語っている。そして、当選者の経歴を見ると、東大6人、京大2人、一橋大1人、早大1で、国私立大のトップクラスの大卒ということになる。もうこれだけで、「やはり、出世するには一流大学」と思う人がさらにたくさん増えるのでは・・・。「学歴社会の再到来?」と。
 念のため、当選者の経歴をもう少し調べてみると、前歴は、いわゆる霞ヶ関のキャリア出身官僚が8人、地方自治出身1人、民間出身1人であった。キャリア官僚は日本中どこへ行っても重宝がられる風潮は今も昔も同じようだ。それに乗じてか、現職官僚が政党から担ぎ出されて出馬しているという経緯がある。もっとも学歴だけでなく行政の仕事ができるから当選しているはずであると思う。
 しかし、広く世の中を見渡してみると、学歴や経歴に関係なく会社や役所、自営業等で活躍している社会人はたくさんいる。むしろその人達がこの世の中を支えていると言ってもいい。私もたくさんの卒業生を送り出しているが、在学中に目立たなかった卒業生が「卒後教育」によって大成長し、出世し、人間的に立派になっている例をたくさん見聞している。
 元大学教授で著名なある学者が「卒業時点での学力の格付けと人間的成熟のあいだにはほとんど相関がない」と明言している。そして「教育には終わりがない」と。社会人になってから会社や役所での仕事や研修、あるいは独学などの「卒後教育」により人間的に成長し、社会に貢献している人がはるかに多いということである。よって、「卒業時で将来のインカム(結果)がわかる」と決めつけない方がいい。
 翻って、新たに高校や大学を卒業し、社会人になった人に一言を。まず、前出のある学者のことばをよく噛み締めてほしいと思う。その上で、ぜひとも学生として学んだものを何かの形で仕事に活かすことと、よき先輩・後輩として人間的に魅力ある人になってほしい。高校・大学というモラトリアムを最大限に発揮できれば、それが本来の「学歴」として認められるであろうと思う。
 この度当選した知事には、せめてものお願いとして、役所の職員はもとより、道民、県民には上から目線ではなく、公平で温かい目と心で接してほしい。そして、歪んだ学歴社会を打破して、一生懸命生きている人を高く評価する governor になってもらいたい。道・県民も日頃から governor をしっかりとチェックしておいて、来るべき選挙時の判断材料に資することで、好ましい選挙人と被選挙人の関係が築かれることを期する。