お彼岸、そして秋色

 このところ、台風の襲来や秋雨前線の停滞で雨の日が多く、秋晴れは3日後という。気温も下がり長袖に。今、お彼岸のさなか、暑さもこれまでかな、と思わせる昨今である。昨日、菩提寺の住職が来訪され、お彼岸のお経を頂戴した。住職は20年前に住職だった夫に先立たれたが、尼僧として立派に寺を護り続けている。まさに信仰と努力の賜である。
 菩提寺浄土真宗大谷派で、宗祖は親鸞上人。その教えとして「どんなに苦しくとも生きる目的を果たすまでは生き抜きなさい」とある。上人は、『万人共通の生きる目的は、苦悩の根元を破り、「よくぞこの世に生まれたものぞ」の生命の大歓喜を得て、永遠の幸福に生かされることである』と説く。住職はこれを信じながら、真実に向き合って生き抜いてきた。この3月、副住職の娘さんに男の子が誕生した。
 健康、財産、地位、名誉、才能などがどんなにたくさんあっても、いずれは老病死によって崩れて去り、せっかくの人生に何も残らないという帰結になってしまう。そうならないように「生きる」という真実とは何かを極めておくことを先人は教えている。それは上人が説く「この世に生を得た歓喜」に依拠した幸せを求め続けることだろうと思う。物心のうち心に重きを置いた生き方が求められる所以であろうと思う。折しもきょうはお彼岸の「お中日」、仏法の教えに学ぶいい機会にしたい。
 お彼岸を境にして、自然は秋色へと変化する。毎年、稲刈りを終えた田園風景が秋を先取りする。この辺りは8月の終わりから9月中旬がその時期である。もうすでに新米が店頭に出回っている。7月には咲き始めるアサガオは今でもきれいな花輪を見せてくれる。壁際に誰にも気づかれないように咲くアサガオはことさらに秋色を誘う。ベコニアは寒期こそ日当たりが必要であるものの1年を通して花びらを見せてくれる安定感がある。
 彼岸と秋色。日本ならではの風物詩のひとつ。暑さから解放され、いい季節を楽しみたい。

      今月中旬、埼玉県東部地域の田園。おいしいコシヒカリの産地

       一輪のアサガオ            ベコニア三姉妹