「みんなが仲良くすることの大切さ」

 今年読んだ書籍で一番心に残っているのは「寝ながら学べる構造主義」(内田 樹著 文春新書)である。そもそも私にとって「構造主義」はかなりの難題であるが、著者が凡人の私でも少しは理解できるように解説しているので興味が湧いたように思う。
 17世紀から20世紀前半にヨーロッパを中心に活躍した思想家たちが「人間はどういう風にものを考え、感じ、行動するのか」の問いに、明快な考え方やことばで応えている。それは構造主義の解答に当たる。当時の構造主義者たちの「言いたいこと」は、主として次の4人の思想家のことばに象徴されている。ほとんど、1900年代の思想家たちである。
(1)みんな仲良くしようね(レヴィ・ストロース)(2)ことばづかいで人は決まる(ロラン・バルト)(3)大人になれよ(ジャック・ラカン)(4)私はバカは嫌いだ(ミシェル・フーコー
 あっけにとられるような考え方であり、ことばである。ここで解説するつもりはないので、この4つの考え方・ことばから率直に感じ取ったものが構造主義の問いの解答と思っていいのではないか。世界、アジア、日本、そして我々地域社会にあっても、「みんなが仲良くすることの大切さ」「ことばの難しさ」「大人になる必要性」そして「バカは本当に困る」という中身を吟味することで、世界が、社会が大きく変革していくのではないかと思う。
 新年早々、アメリカの大統領が変わる。期待と疑心が半々であるが、良くも悪くも今までにない大きな「変化」が生じるだろうと識者は指摘する。世界中が「賭け」をしているような心理に追い込まれており、過去の思想家の存在がクローズアップされる所以であろう。
 2016年もあと2日。人々の目は翌年へと向き始めているが、どんなことが起ころうと確たる思想や思考は明確にしておくべきだし、同時に寛容性の重要さを忘れないよう願うものである。
 なお、この書籍については、2016年7月4日付当ブログでも取り上げているので覗いていただければ幸いである。