ディズニーランド、人気の秘密

 つい先日、母校(岩手県)の中学生が2泊3日の修学旅行で上京した。初日の午後は劇団四季(浜松町)の劇の鑑賞、2日目は東京ディズニーランド、最終日は都内見学という日程。特に、中学生の間ではディズニーランドの人気が高く、修学旅行の見学地に入れている中学校が多いようである。なぜ、今だに人気があるのだろうか。
 ディズニーランドは1955年7月、ロサンゼルスに開園した。創設者はウォルト・ディズニー(1901〜1966)。その後、フロリダ(1971年)、東京(1983年)、パリ(1992年)、香港(2005年)にも開園する繁盛ぶりである。私は東京には数回、さらにフロリダ州オーランドのディズニーワールドにも行く機会があった。
 創設者のウォルト・ディズニーは社是として次の3つを掲げた。(1)園内の清潔さ(2)ショウの楽しさ(3)従業員の礼儀正しさ。
 (1)については、ゴミが捨てられたりすると数分以内に除去される徹底ぶりである。常にきれいで清潔な環境を維持しているうちに、来客はゴミを捨てないようになった。「清潔」はアメリカ人の自然観に依拠している。 
 (2)については、舞台のショウだけでなく園内の建物や乗り物などすべてがショーであるという価値観に支えられている。ディズニーワールドにはニューヨークのエンパイア・ステートビル街の巨大な壁画があり、それを背景に写真を撮ったら「ニューヨーク」が再現した。また、清掃に当たっている従業員もディズニー作品にのっとったコスチュームをまとい役を演じながら作業をしている。
 (3)については、従業員はキャスト、来客はゲストという考えに立ち、来客への対応が徹底している。何を質問しても的確な案内が返ってくる。
 あらためて、訪問した当時を思い起こしみると、社是が徹底していることに気づく。この3つの社是は最初からあったものではなく、来客の意見や反応をもとに分析し、見出したものであるという。
 ウォルト・ディズニーは自然をそのまま残し、自然と人間の調和を図っていることがアメリカ人の心を捕らえたのであるが、それは東京やパリ、香港においても同じように受け入れられている。まさに、ウォルト・ディズニーの社是に込めた経営哲学こそ人気の秘密というべきであろう。
 しかし、ウォルト・ディズニーはディズニーランド見学者のためのホテルや道路、駐車場等で広大な自然破壊を生む結果となり悩みに悩んだ。その問題を少なからず解決すべくオーランドのディズニーワールドは広大な森林の中に自然を生かしながら創られていて、遠くからはその姿は見えない。それでも、自然破壊のそしりは永遠に避けられないのもアメリカなのである。
 このたび東京ディズニーランドを訪れた母校の中学生は大いに楽しんで帰郷しただろうか。いつの日か、創設者のさまざまな生みの悩みも学んで欲しいが、今回叶えてくれた夢や感動は大事にしてもらいたい。