「キョウヨウ」と「キョウイク」

 「天声人語」(7月14日付)の筆者が少し前に退職した先輩と偶然会い、立ち話をした。体が引き締まり、日に焼け、すこぶる元気そうな先輩は日々の暮らしぶりを楽しげに語ったが、そこには秘訣があることを知った。それは「キョウヨウ」と「キョウイク」だという。教養と教育かと思いきや、なんと「今日、用がある」と「今日、行くところがある」ことだという。
 私もとっさに教養と教育を連想し、どちらも充分ではないだけにお手上げだと思い、すぐ先を読むとぜんぜん違う内容であることがわかり少しホッとした。とは言え、二つとも簡単そうだが年間を通してみると意外と難しそうだ。むりやり用を作ったり、むりやり行くところを探したりでは楽しさも充実感もないだろうと思うからだ。
 ちなみに、今月は同級会、ある同期会、ふるさと会の会議、地域のお祭りの準備と本番、老人ホームの母の面会、買い物などの「用」があった。そのために要した日数は1件複数回のもあり延べ20日位。しかし、同級会や同期会などはこの先2、3年はないし、お祭りも1年後で、もう当分はない。
 「行くところ」としては、スポーツクラブがある。もう20数年来、一日の生活の一部に組み込まれていて、新鮮味こそないが心身のリフレッシュにはなっているようだ。あとは「用」があって出かけるところは東京が多い。何回行っても新しい発見があるし、建物やファッションなどの流行が一目でわかるので刺激的であることは確かだ。
 二つとも、かの先輩の秘訣に該当するかどうか自信はない。意図的に、というより他動的に「用」を足し、しかも日数的には多く出かけていて、結構せわしないのでゆったりした充実感がない。それでも「用」も「行くところ」もある今をありがたく思うべきだろう。少なくとも脳を刺激し、脳を元気にしてくれると信じて・・・。
 今日の「天声人語」は「高齢で独り暮らしの男性が孤立する危険性」について取り上げている。ある調査によると、65歳以上の独居の男性は17%もの人がほとんど人に接してないという。同じ年齢層の独居の女性は4%だから、違いは歴然である。男性は人間関係を職場に頼りがちなので、退職後に新たな人間関係をなかなか作りにくいのではないかと分析している。地域で仲間づくりができる女性とは大違いである。
 お互い様、この先独居暮らしも他人事ではないのでそれ以前に、男性も女性のように気さくに仲間をつくり孤立しないように備えないと・・・。このことも絡めると、まさに「キョウヨウ」と「キョウイク」は金言だ。