スキー文化を後世へ

 つい最近、長野県の小海スキー場で60人からなるスキー講習会がありました。もう12回目になるのですが、毎回大勢参加してスキー技術のレベルアップはもとより人的交流が年々深まりスキーの楽しみ方にも変容が見られます。スキー人口が減少する中で貴重な講習会であったと思います。
 私は、参加者唯一の児童Kちゃん(5年生女児)の講師を受け持つことになりました。Kちゃんはスキーは初めてで不安な気持ちと早く滑れるようになりたいという気持ちが交錯していたはずですが、後者の気持ちが上回り不安や怖さを払拭し、午後にはリフトに乗り長い緩斜面を左右に回転しながらノンストップで滑る上達ぶりにすっかり感心させられました。
 好天に恵まれて、真っ青な大空にぽっかりと浮かぶ雲、厳寒に耐える白樺林、遥か彼方に噴煙を冠した浅間山(活火山)も見えました。スキーは大自然の中で楽しむスポーツなので、周囲の光景にうっとりさせられます。Kちゃんもリフトから自然の営みを目の当たりにして感激している様子でした。スキー講師(インストラクター)にはスキー技術指導だけでなく、周囲の山々、樹木の分類、動物の棲息、気候の変化、雪国の人々の暮らしなどについて参会者のインタプリター(通訳=解説)役を担うことも忘れてはならないと思います。まさにスキー文化の伝道者と言っても過言ではありません。
 2日目、Kちゃんはもう一つ高いリフトに乗り中斜面に挑戦することになりました。その3回目、同行のおばあちゃんの目前で全く危なげなく滑り降りました。実は私も驚きました。プルークボーゲンが安定していて、急斜面にも耐えていたのです。私はKちゃんの前で「やったやった、万歳、万歳!」と大声で何度も褒め称えました。おばあちゃんも感動していました。Kちゃんの向上心と心豊かさが上達を早め、スキーの楽しさをいち早く享受できたのです。その背後には、できないことは何回でも練習するというひたむきな努力がありました。
 講習会は、他のグループもそれぞれに目標を掲げ技術の向上とコミュニケーションを図りながら、少なからず達成感を得て終えました。Kちゃんもその一人です。私たち大人はこのすばらしいスキー文化を後世に伝承するという使命を託されています。今回、託すべき人の最年少者がKちゃんだったのです。「託すべき人」を一人でも多く育成していくという地道なスキー活動がスキー人口拡大に直結するものと信じています。Kちゃん、感動をありがとう!これからもスキーを続けて、広めていってね。

   スキー2日目の 初心者には厳しいはずの中斜面を必死に滑るKちゃん